同性遊戯に夢中
私の家の寝室は、十畳ほどのスペースに、大きなダブルベッドが二台並んでいます。
それは、広びろとしたベッドの上で、ゆったり快適に眠ることが、なによりも明日の活力のために大切だという夫の考えによりました。
それは同感で、眠り、それも快眠こそ、食とともに、健康とそして美容にとって大事なことです。
同時に、夫婦の夜のいとなみにとっても、広いベッド(結婚初期は二台のダブルベッドを一つにつなげて戯れたものです。でも、それはもう遠い昔の話……)は楽しい、楽しかるべき舞台装置でした。
「オネエさまたち、こんな広いベッドの上で毎晩、愛し合っているのねえ」
ハッとして目をあけると、つばめがちょっと淋しげな、すねたような顔をして私を見つめているのです。
「毎晩? そんな時代もなくはなかったけれど……」
「まあ、オネエさまったら、憎いひと」
「だけど、それはもうずっと昔の……新婚時代で終わったわ」
「こらこら、そんなノスタルジーにひたるような顔をするな! ふふ、私が忘れさせてあげる」
いって、彼女は私と逆向きに横臥したのです。
次いで、私の身体を自分のほうに九十度向けさせました。
「見て、オネエさま。私の子猫ちゃん、待ちきれないくらいびしょびしょでしょう?」
ふるえ声でいってつばめは、ふたたび私の陰部に情のこもった愛撫、そしてキスをくるめかせてきたのです。
「ああっ、つばめちゃん、私また燃えてしまうわ……そこよ、そこそこ」
「燃えて、私も燃えさせて!」
子供の金魚の口にも似て可愛らしいつばめのピンク色の花唇に、私も思わず手指をあてがい、二枚の可憐な花びらをそっと愛撫しながら、生まれて初めて口づけしていました。
「いいッ、オネエさま、うーん、それよ、それそれ、感じる感じるッ」
二枚の花びらの内と外に舌をそよがせ、ちょっと甘ずっぱくて若々しい蜜の香りを嗅いだあと、すすっていたのです。
「ああっ、あはあっ、嬉しい嬉しい」
下半身をワナワナ震わせて快感をさかんに訴える彼女の、包茎だと思っていた花芽のさやが、徐々にめくれてきました。
その半分ほどまくれた花弁の上端の花芽を舌先で甘くねぶり、次いでソフトにしゃぶりたてた瞬間、
「ううーん、駄目え、駄目駄……ッ目え」
鮮魚のように彼女は四肢をピクピクさせ、突っぱらかせて、そのまま達してしまっていたのです……。
クライマックスは、お互いの股を、股間を接点にして交差させる、秘技“チョメチョメ合わせ”。
あんな、お互いのぬるぬるになった花唇とクリトリスをぐりぐり相互にこすりたてての性戯なんて思ってもみませんでした。
が、そのこと以上に、ペニス挿入によらないでえられる強烈な快感、えもいわれる倒錯じみた感覚に酔いしれた私は完全にノックアウトされ、とろけるようなエクスタシーの津波に続ぞくとのみこまれていったのです……。
つばめとは、お手伝いの女性が休暇をとっていたこともあり、夫が出張中、ほとんど一緒に過ごしました。
着換えを取りに彼女がいったん自宅へ戻り、またやってくると、食事とお風呂、また朝一緒に走るジョギング以外、ほとんどベッドの中で愛し合っていたのです。
お陰で私は、すっかりつばめと、つばめとの同性愛戯に夢中になってしまいました。
「私、心配だわ」
「どうかして、オネエさま」
「だって……だから、夫と……ね、元のように暮らせるかって……」
「ダンナ様と、昔のようにセックスができるかってことでしょ」
「……ええ」
「愛情があれば大丈夫」
「あんなこといって。つばめちゃんも、男性ともするの?」
「いまはレズ専門だけど、以前は好きな男がいて、彼のこと尊敬してたし、優しくしてくれたから、だから大丈夫だった」
「尊敬? ……優しく……?」
「ええ。私、ちょっと好きだったカレに、昔、レイプされちゃったの」
「そうだったの……」
「うん。でも、ステキな男もいることを知ったから立ち直ったけど、その彼の前に、精神的肉体的ダメージを負っていた傷心の私を救ってくれた美人弁護士がレズで……」
「そういう背景があったのね」
「だから、レズにも二通りあって、レズビアン専門と、両刀とね」
「まあ、両刀だなんて」
私よりも年齢はひと回りも年下ですが、つばめのほうが、少なくても性の分野においてはオトナでした。
私は、世俗的な打算を優先させたことで、世間をうんと狭く、小さくしてしまったと激しい後悔めいた感情におそわれたのです。
そのおもいが、つばめのいまもお付き合いがある前述の美人弁護士との、考えてもみなかったレズの三人プレイへと私を向かわせました……。
百合の性宴に酔いしれ
それから一週間ほどした平日の午後。
県庁所在地がある繁華街の一角の、駅のそばにシャレたそのシティホテルがありました。
だいぶ秋風がまじってきたとはいえ、まだ日なたは残暑が厳しく、この地方都市全体にまぶしい光が降り注いでいます。
「オネエさま、部屋は最上階の69号室。ふふ、シックスティーナインよ」
ホテルの前に着くと、つばめのケータイ電話の声がよみがえりました。
「お昼ご飯は済ませてきてね。夕食を三人で、お酒も飲みながら楽しみましょう」
三人とは、つまり私とつばめと、そして前出の美人弁護士の先生です。
聞けば、弁護士は私より少し年上の三十代半ばで、地元と東京に事務所を持っており、また仕事で全国を飛び回っている多忙な身。
この日は久しぶりに、つばめと、そして私のために一日オフにしたそうです。
みずからも強姦された暗い過去を持つ(そのことは、つばめと私だけが知ること)彼女は、強姦事件を、被害者の側に立って積極的に引き受けていました。
私が、つばめがあまりに美人弁護士の話題を出すので一度逢ってみたいといったら、つばめから前日、
「三人で食事しましょう、ですって」
それでこの日、指定されたこのホテルへやってきたのです。
審美眼のあるつばめのいうことですから、けっこうな美人であるには違いありませんが、実際に逢うまでは、不安と楽しみが交錯していました。
夫は、出張から帰ってきた日の夜に挑んできましたが、つばめによって性の多彩な歓びを知ってしまった私には、非常に感激乏しい交歓でしかなくなったのです。
拒絶したいほどではありませんでしたけれども、感じているフリをする演技が苦痛に感じられました。
そのこともあって、打ち明ければ、三人での夕食のあと、また新たなアバンチュールを予感していたのです。
予感して、だから、念のためシャワーも浴びてきて、下着はもちろん、同棲相手なのにちょっと恋人とデイトするときみたいにおめかしもしてきました。
でも、まさか、まだ午後のまばゆい陽差しが包んでいる時刻に、乱交ともいうべき、ただれたレズの三人プレイにエスカレートするなんて思いもよらなかったので……。
「着いたわ、つばめちゃん、いま、どこ?」
約束時間に彼女のケータイに電話すると、
「もう、お部屋よ。しのぶさんも一緒。楽しみに待ってるわ。ドアを開けておくから、ノックなしで勝手に入ってきて。ドアはオートロック式だから」
声が、弾んでいるというより、どことなく震えて、語尾がカスレていました。
彼女の興奮が私にも伝染し、その部屋のドアの前に立ったとき、なぜか胸がキュンと鳴り、肉体のどこか一カ所に軽いヒクつきが生じていたのです。
ノックしようとして、慌てて手を引っこめ、急いでドアを開けたら、カーテンをしているせいか、中は薄暗いのです。
「つばめ……ちゃん……?」
足を一、二歩室内に踏み入れて声をかけたとき、彼女の返事の代わり、背中でカチャッというドアが自動ロックされる音がしました。
ドキッとした次の瞬間、それを合図のように、
「ああっ、つばめ、感じちゃう、そこそこッ」
中廊下の奥から、つばめのなまめかしい声が噴きこぼれてきたのです。
声に吸い寄せられるように私は、条件反射的に奥へ歩み入っていました。とたん、
「つばめったら、本当に感じやすくなったわねえ。でも、好きよ。とっても好き」
インテリにふさわしいシャープな顔だちの美女、女弁護士とつばめが、すでにお互い全裸になり、刺激的なプレイにふけっていたのでした。
他人のセックス、ましてやレズプレイなんて、目の前で現実に見るのは初めてです。ショッキングであると同時、キングサイズのベッドの横で立ちつくしたまま、私は名伏し難い激情におそわれました。
前もって話を聞いていたとはいえ、あんなに激しく私と愛し合ったつばめが、しのぶさんによって大股びらきにされ……され、というよりみずからMの字ポーズに、スラリと長い脚を折りひらいていたのです。
そして、指と舌とくちびるの三重奏による華麗な愛撫により、あられもなく身悶えていました。
私の登場により、興奮がピークに達しているのか、私に見せつけるようにして小ぶりの双つの乳房を、みずから両手でギュウッとワシ掴んでいたのです。
「オネエさま、いらっしゃい。ああ、ねえ、黙って見ていないで、ね、ああ、一緒に三人で、いろいろ楽しみましょうよ」
「そんな」
と口では困惑してみせながら、私は強い好奇心と誘惑的キモチでいっぱいになり、ブラジャーが痛いほど両の乳房が固く張りつめ、一番にお気に入りの水色の絹のパンティーの内側が、すでにベタベタになってしまっているのを意識したのです。
「つばめがいったとおり、ホント、ステキな美人の奥さまねえ」
つばめの股間から口をはずして、私を見上げたしのぶさんの薄くてセクシーな口元が、枕元の明かりでヌラヌラ妖しくぬめ光っていました。
突き上げるような誘惑と情欲に負け、急いでシャワーを浴び、バスタオル一枚の姿で二人がいるベッドに上がると、からみ合っていた二人がパッと身体を離し、二人がかりで私からバスタオルを奪って甘く押し倒し、
「まあ、つばめちゃんみたいにきれいな身体ね。おチチも弾力がありそうで形もいいし、引き締まってくびれたウェストも、まあるいヒップも、ふふふ、おべちょこも魅力的」
いって美人弁護士が、繊細な手つきと指さばきで、早くも私の陰部を甘くねぶってきたのです。
「あッあッ、いきなり……でも、感じちゃう」
「ふふふ、さすがに人妻ね。感度も申しぶんないわ。なかが、もうこんなにあふれそうになってる。お豆も……ね、つばめ、先に私が栄似子さんの魅惑的なべべちょこお豆をキスさせてもらってよいかしら」
「うふっ。もちろんだけど、じゃ、いいわ。私、オネエさまの唇とおチチいただくから」
明るくケロリといって二人が、私の上半身と下半身を二人がかりで甘く情熱的に攻撃してくると、私はたちまちワケわからなくなってゆきました……。
今後、夫の知らない新たな性の冒険に、いえ、もう旅立っている私です。