「あぁ、いい、すごくいい…」母の姉妹の中では抜群の美女であるインテリ叔母は、「すごく女泣かせのお道具だわ」と、夫が見たら卒倒するような奔放ポーズでおれのこわばりを迎えて…。
(告白者)
広木田恭介(仮名・32歳)
女泣かせのお道具だわ
したたか濡れた粘膜にゆっくりゆっくり挿入し根元まで侵入させきると、豊潤な香りとともにきわめて魅惑的なヒダのうごめきが愚息にまとわりついてきた。
「恭ちゃん、ああ、女泣かせのお道具ね」
怜子はいい、もっと深く迎えたいとでもいうようにMの字ポーズで広げていた白い股を、両膝を宙に上げおのれの形のいい乳房に両膝小僧がつかんばかりに両足を屈曲させた。
つれて窮屈感が増し、やるせない心地よさが一段と増幅されてきた……。
おれは、厳密には数百種類もあるという血液型をたかがABとかの数種類に分けて人間をガサツに判別する血液型占いとか、罪もなき無辜(むこ)の民や弱者ばかり犠牲になるこの世の真実の姿を見て、宗教の説く救いなど信用なんてしていやしない。
宗教は信じないが、自己の信じる道を私欲を捨て清廉に生きている者がこの世に少なくなく存在することは信じる。
それはともかく、この世にはときどき偶然というものがあることもおれは身をもって否定できなくなった。
会社の上司であり、社長にも気に入られている女部長と、シティホテルでなくラブホテルに行きたいという彼女の要望にこたえて門をくぐった日のことだ。
そこはある繁華街の裏手に位置していて、その種の建物がまとまって何店舗か軒を連ねているのだが、まったく適当に入ったその店のフロントで受け付けを済ませ、エレベーターの前で彼女と二人で待っていたときだ。
上階から降りてきたエレベーターのドアが開き、中から叔母の怜子がダンナとは別の男と一緒の姿を現した。
「う」
「あ」
声にこそ出さなかったが、おれも叔母も一瞬だがお互いに小さく口の中で唸り声を発したのは、お互いに口元が半開きになったことで理解した。
叔母もおれも表情は変えなかったが、目に動揺がかすめたのを二人は悟った。
情事を終えて出てきた叔母と、これから気分転換ほどにしか興味がなかった女との情事に向かうおれはさりげなく他人を装ってすれ違った。
目的の部屋に向かうあいだ、母の姉妹の中では飛び抜けて美形でプロポーションも抜群、しかも修士だが大学院まで出た才媛の叔母がひと回りも年上の中年男に抱かれてどんな狂態痴態をダブルベッドの上でくり広げたのか想像、いや妄想がひっきりなしにおれを襲った。
「す、すごい、すごすぎちゃう、わあ、あははあ、うわっうわっ、うわっわあ」
単なる気分転換程度にしか思っていなかった食いすぎのチョイデブ女は、叔母の登場で興奮冷めやらぬおれのエネルギッシュな攻撃に壁を突き抜けてしまいそうな喜悦の声をほとばしらせた……。
翌日の火曜日の夕方。
退社時刻を過ぎてまもなく、待っていたかのように叔母の怜子からケータイに電話が入った。
「いま、話せる?」
「こりゃ、どーも。大丈夫ですよ」
少し離れた席から昨夜の情事のお相手である部長がチラとおれを見たが、無視して廊下に出た。
「なあにが、こりゃドーモよ」
「あの、ごぶさたしてます。お元気ですか……」
「バッカもん、とぼけんじゃないわよ、昨夜、会ったばかりじゃんかい」
叔母の声には余裕があった。というよりも、知られてしまった事実をいまさら誤魔化すなど、そんな小ざかしいことはしないという一種潔さがあった。
「はあ……やっぱり叔母さんでしたか」
「もう、いいわよ。それよりも、あんたみたいなイロ男があんな女が好きなの、ちょっと趣味が悪いんじゃないのお」
「いや、いろいろと事情もありまして。でも、お元気そうでなによりです」
会話をつづめようとしたのは、女部長がのっそり廊下に出てきて、コホン、とわざとらしい小さなセキをひとつ、おれをチラと見てたからだった。
昨夜、まるで寝小便にも似てワイセツなまで濡れ濡れになった彼女は、きっと夫が見たら腰を抜かすばかりにヒワイなポーズで快楽をむさぼった。
「こんなのって、ふわわああ、こんなのって信じられない、初めてなのお」
とケモノじみた声をあげたのだったがダンナとの関係が冷えきっているのだろう、今夜も挑発的な視線を朝っぱらからチラチラおれに投げつけてきた。
が、むろん冗談ではない。多くたって月に一度以上、彼女を抱く気も利用価値もありはしなかった。
「ふっふ、恭介ってスマートな顔してなかなかなのね。お嬢ちゃん育ちの姉の子とも思えないわ。ま、いいや。恭介、あなたは興味あるの、今夜つき合ってよ」
「はい、叔母さん、分かりました」
女部長の耳に届くよう、おれはわざと大きな声を発した。すると叔母は、
「ねえ、確かに私は39歳のオバンだけど、あんまり何度もオバさんオバさんいわれると、いい気持ちがしなくてよ」
「はい、分かりました、オバ……さん」
「はっは、仕様のない子、じゃ、時間と場所をいうからメモして。えーと……」
メモ帳に筆記し終えたとき、女部長が待っていたかのように近づいてきたが、
「母の妹の叔母から用事を頼まれましてすみません、今日はもう失礼します」
「そう、残念ね、でも今度の……」
彼女の言を無視して、中に入っていた。