それは複数の愛人に囲まれた夫への復讐か…。プロポーション抜群の美貌の夫人は最初は長男と、次いで次男との快楽の海に溺れて…
(告白者)
橋野いずみ(仮名・44歳・専業主婦)
恋人以上の深い関係に
夕食後、ゆっくりお風呂に入って冷たい紅茶をグラスで飲んでいると下の息子が二階から降りてきました。
「お疲れさま、雅彦、あなたも飲む?」
広いリビングルームのソファに座っていた腰を上げようとすると、
「いや、いいよ。自分でするから」
私を制止して、次男はダイニングルームに向かいました。
大型冷蔵庫から缶ビールを出し、
「こっちがいいや」
同じ冷蔵庫から冷やしたグラスを一緒に持って戻ってきました。
息子は大学浪人、19歳です。本当なら未成年なので法律違反ですが私も夫も細かいことはいいません。
「疲れた? それとも勉強が一段落?」
夜9時のニュースを流している大型テレビをリモコンで消すと、
「どっちでもない。気分転換」
いって息子は、テーブルをはさんだ私の向かいに座り、ぷちゅっと缶ビールの栓をきりました。
その乾いた短い音が静寂にみちた部屋の空気を揺らし、切り口から少しこぼれ出たビールの泡がなんとなし私の心の中を波だてた気がしました。
「兄貴、大学時代はガキっぽかったけど船乗りになってから、すっかり精かんな大人の感じに変わったね」
二人いる子供は二人とも男の子。
三つ違いの長男は、以前からの夢で、一年の大半を海の上で過ごす船乗りになりました。
もっとも、いまはまだ見習いですが、短期の夏休みで先日、帰ってきたときにはすっかり日焼けして肩や胸にも肉がつき、次男がいう通りのたくましさを少しずつ身につけている印象でした。
「あなただって、船乗りでもパイロットでもなんでも、人生は一度きりなんだから、好きに生きたらよいのよ」
「ありがとう、お母さん……」
グラスに液体を注いで、ぐっと半分ほど一気に口に流しこんでから、
「ふうう、旨いや。でも、大学に入学したら、もっと旨いだろうなあ、ふふ」
体育会系の活発な長男と違い、次男は内攻的で芸術家肌のタイプでした。
母親の私がいうのもあれですが、夫と違って2人ともすなおな性格で、顔も頭も悪くありません。頭の回転の良さは夫に似て正解だったと思いますが、エリート意識が強い夫に似ず、顔や性格は私似だったので内心ホッとしていたのです。
夫は、金融系の大きな会社の役員で、海外出張も多く外泊は年中行事。そして週末は、これも仕事のうちだといってゴルフ三昧の生活です。ただ、家のことは私にまかせて、二人の子供たちのこともいっさい干渉しない(それは自分がされたくないからだと思います)主義でした。夫とはもう二年以上もまったく性生活がありません。
おそらく、財力もある夫のことですから、愛人の一人や二人いたって不思議じゃありませんが、女の意地で、そのことに私はふれませんでした。
夫も、そして次男も知りませんが、夫とちょうど仮面夫婦になったころ、偶然というべきでしょうが、家を出た長男といっとき普通の恋人以上の深い関係を結んでいたのです。思い出すだけでも身体が熱くなるようなめくるめく背徳……。
ナマでやらせてくれ
初めて長男と世間をはばかる関係に堕ちたとき、心のどこかに私は、まだ見ぬ夫の愛人たちへの対抗心みたいな気持ちがありました。
ううん、女たち以上に、夫への当てつけ……もっといえば復讐の気持ちが強く働いていたと思います。
役員待遇になってから急に出張や外泊が増え、世間知らずの私は単純に夫の出世を喜んでおりました。
ところが三文ドラマのテレビをなにげなく見ていたとき、キラッと疑惑が私の内に芽ばえたのです。
プロの探偵に調べさせると(サギみたいな高額の報酬を支払わされてあきれましたが)、案の定、出張と称して女のマンションに泊まっていたのです。
夫がいそいそと腕をからめて女の部屋に仲良く入ってゆく望遠レンズで撮った写真、同じく朝、満足してスッキリした顔で女の部屋から出てきてそのまま会社に向かう何枚もの盗撮写真……。
バカみたいに高額の費用をふんだくられましたが、他にも同様の別の女たちとの浮気の現場写真がありました。
私との夜の夫婦生活がゼロになった時期、夫は複数の愛人たちとよろしくやっていたのです。
いっそ、そのへんの行きずり男たちにまだまだ美貌もプロポーションも衰えてはいないと自負している私は関係してやろうかと考えました。
でも、夫と同じ次元に落ちたくないという、ギリギリ最低のプライドが私を踏みとどまらせたのです。
1つ年上の夫とは、大学時代に同棲していました。
避妊には気をつけていて、コンドームをいつも使っていましたが、そのときだけ……5月の終わりか6月の初旬、ちょうど梅雨が始まる前、
「たまにはナマでやらせてくれよ」
という夫の強い希望で、なれない膣外射精を約束させ、愛し合いました。
あんなごく薄いものでも、とくに男にとっては快感の程度が違うようです。
もちろん、心理的なことも大きいのでしょうが、とにかく夫はハッスルして、私も燃え燃えになり、一瞬だけ夫はタイミングが遅れたのでしょう、私の中に少しだけこぼしてしまったのです。
大学卒業とほぼ同時に出産を迎えた私は、単位は三学年のうちにほとんど取得していたからよかったのですけど、卒論を仕上げるために大学の図書館に足を向けねばならず、おなかが突き出た姿を学友や恩師に見られるのはけっこう苦痛でした。
そんなわけで、私は会社勤めの経験もなく社会人生活はゼロ。
ミスキャンパスとまでいわれた私をひとり占めした夫は、私を家庭に置いて、仕事に精を出すことができました。
モデルまがいのスタイルと、人気女優みたいに見ばえのする私の顔や外観は、どこに連れていっても夫にとって大いに武器の一つになったでしょう。
そうやって私を有効に利用しながら夫は出世への野心を次々と現実のものにしていきました。
そしていま、私に利用価値がなくなった……とまではいいませんが、その必要もないくらい実力を身につけた夫は、私にではなく外の女たちに目を向けているわけです。
でも、私だって、ただ老いていくわけではありません。時期がきたら、前出の証拠写真と離婚届を彼の前に突き出してやる覚悟を常に用意しているのです。
私まだまだ現役なのね
「どうしたの、敏彦、めずらしく元気がないじゃない」
「へへ、やっぱり分かる?」
「朝食だってめずらしく残したし、どこか具合でも悪いの?」
あれは二年ちょっと前の週末の土曜日、朝九時ころだったでしょうか。
夫が早朝からゴルフ(と称して愛人宅へ?)に出かけ、しばらくして次男が朝食のあと進学予備校に出かけました。
夫は外泊、次男は夕方に帰る予定でした。
長男の敏彦は少し遅れて二階の自室から降りてくると、食卓を囲んでいた私と次男の席に加わりましたが、いつもの食欲を見せず、めずらしく食べ残しをしてまた二階へ上がってしまったのです。
食器洗いと台所の用事をやっつけると私はいつもの習慣で熱いコーヒーを口にしましたが、心配でひとくち口をつけたところで長男の部屋に上がりました。
「ねえ、どうしたの、お母さんにもいえないこと……お金? 卒業? 就職?」
私がしつこく聞くものですから、上下のトレーナーを着たままセミダブルのベッドに寝っ転がっていた息子は、
「母さん、窓を閉めてくれ。誰も聞いていないと思うけど、お母さん以外には話したくないから」
「……ええ、わかったわ……」
いわれた通り緑のきれいな、よく整えられた小さな公園を見渡せる陽当たりのよい西向きの窓を閉め、ついでに白いレースのカーテンもいっぱいに引くと、
「前に連れてきた彼女、覚えてる」
「あ、うん、なかなか感じのいい彼女だったじゃない、明るくて快活で」
「うん、結婚も意識していたんだ。だから大事に接してきたんだけど……」
「なあんだ、つまりフラれたのね」
「なあんだ、はないよ、お母さん」
「あっは、フラれるのも人生。青春にはつきものよ、失恋の一つや二つ」
私はわざと明るく突き放すようないい方をしたのです。
それなりに礼儀正しく、いまどきのコにしては年上の人間に対する態度も悪くありませんでしたけれども、母親の私からすると、ガールフレンドとしてならともかく、長男の敏彦の結婚相手としたら母親の私の目から見てちょっと物足らない気がしました。
だから、私は内心で彼女にフラれたことは歓迎すべきことでしたが、息子にはショックだったようです。
「よくいうよ……ひどい母親だ、はは、ははは……くそっ」
そんな姿を見るのは初めてでした。
込み上げるものに勝てずに息子は、ベッドの上でプイと背中を見せ、どうやらこぼれる涙を手で拭っているのです。
「ごめん、ごめんよ、敏彦……母さん、あなたを慰めるつもりで……」
「分かってる、分かってるけど……でも、情けないよ、情けないのさ、自分が」
肩を震わせている彼の背中が淋しげで私は激しい母性愛が込み上げました。
気がつくと息子のそばに寄り、ベッドに腰かけて、
「敏彦くらいの男前なら、もっとステキなコが……」
「違うんだ、そうじゃないんだ」
「なあに、何が違うっていうの……」
「はは、実はおれ……女は初めてだったんだ……それで、それで……」
そういうことだったのかと、半分ほど話が見えました。
見えたとたん、久しく遠ざけていた感情が私の中で濃密によみがえりました。
と同時、彼女のアパートかホテルでかは知りませんが、お互い裸になった2人が……息子と彼女の青いセックスが目の前にくっきり浮かんだのです。
舌を吸い合う濃厚キス。
私より大きいサイズの彼女の白い乳房をまさぐり、吸いたてる息子。
その顔は幸せいっぱい。
彼女は興奮し、頬を紅く染め、息子は男性自身を若々しくみなぎらせる。
若き日の夫がそうだったように、息子の血管を浮かべて青すじばった若茎は、鮮魚のようにピクピク脈打つ。
それをいとおしげにぎゅっと握り締める女の子。
「ああ、いい……」
と息子は呻き、我慢できずに彼女のやなくらいぬかるんでしまった好奇心いっぱいの花弁に手をのばす。
「ああ、感じちゃう、敏彦」
と声を弾ませ、身をくねらせる。
やがて興奮と緊張で身をこわばらせながら、2人はぎこちなく肌を合わせ……ようとして
「しくじっちまったんだ……」
背中を向けたまま息子が呻くようにいいました。
「誰だって最初は……パパだって……」
と私が話そうとしたのを無視して、
「悪友が、ソープランドに誘ったんだ。でも、おれは初体験こそ好きな女としたかったから……でも、だけど、あんな惨めなおもいをするなら……くっそお」
「ほら、こっち向いて、顔を上げて母さんに話してごらん、母さんだって女なんだから」
息子に向かって自分のことをオンナといったとき、背すじに電気が走った気がしました。
(そう、私はまだまだ現役なのよ、枯れてなるものですか)
そんなおもいが込み上げたのです。
「母さんは、いまでも美しい女さ、おれが息子じゃなかったら口説きたいくらいいまでも輝いている」
顔だけこっちに向けて私を見た息子の目に、攻撃的な、男性的な色がひしめきました。
私はドキッとして身を固くしましたが表情には出さず、
「つまり、入口が分からなかったの……」
「違う……それはなんとか、いろいろと予備知識をたくわえていたから」
「ちゃんと……入ったのね」
「うん、問題は、そのあとさ」
思い出してか息子は、自己嫌悪の表情になってから、
「というと……」
私に結論を求める視線を向けられ、
「ちゃんと、ピストンも、仕込んだ知識通りにできたんだ」
「………」
急に喉が渇き、私は思わずゴクリと唾液をのみこみました。
息子はそれには気づかないのか、
「女性の粘膜があんなに気持ちいいものだったなんて……はは、三コスリ半だ」