小さい頃から性行為をしていた姉と一線を越え
家出した姉の旦那を探す手伝いを強要された僕は、少年時代、都合の良い遊び相手として姉に何度も性的イタズラを受けていた時期があるのだ…。
(告白者)
堀越紀之(仮名・27歳)
失踪癖の旦那
姉ちゃんとセックスしたのは、何かの事故に等しいことだったけど、冷静に考えれば、そうなってもおかしくない姉弟関係だった。
過去にも何度か、家出をしたダンナさんを「失踪した!」と大騒ぎして、探すのを手伝ってくれと実家に駆け込んできたことがあって、あの日もそんな勢いで赤ん坊を抱えて実家にやってきた。
結婚して四年、姉ちゃんは今年31歳になる。ダンナさんは一つ年下で、短気でワガママなお姫様のような姉ちゃんとは正反対のおとなしい感じの人だった。どうも姉ちゃんの尻に敷かれているらしく、小さいのから大きなのまで、家出を繰り返しているらしかった。
帰宅拒否症かと疑いたくなるくらい、よくフラリとどこかに行ってしまうそうだ。
そうなると、毎度のごとく姉ちゃんは大騒ぎとなる。実家にやってきては僕にダンナ捜索の運転手をさせる。
「友達の家とかあたってみたの?」
「立ち寄りそうなところは一通り電話かけてみたけど、どこにもいないのよ」
「少し家で待ってみたら?」
「何かあったら大変じゃない。もしかしておかしなことになってないかって、じっとしてられないわよ。近所はもうまわってみたから、最悪、彼の実家のほうにも行ってみないといけないかもしれないわ」
姉ちゃんは探偵ドラマの主人公のような顔つきで、ダンナさんが立ち寄りそうな場所を次々に並べ立て、僕に行き先を指示した。
昼から探し始めて、結局は夜になり、ダンナさんの実家のほうまで捜索範囲を広げることになった。
気が進まなかったけれど、姉ちゃんは大真面目でダンナさんに何かあったらと心配しているから、よけいなことは言えない雰囲気だった。
ただの家出で、しばらくしたらひょっこり戻ってくるに違いないのに、姉ちゃんは「失踪した」と大騒ぎしている。どこかズレているのは、子供の頃とまるで変わっていない。
四つ上の姉ちゃんは、幼い頃から僕に高圧的な態度であれこれ指示した。自分の言いなりになってくれるのが僕だけだったからで、短気でワガママな性格から学校でも近所でも嫌われ者で通っていたから、遊び相手は弟の僕一人しかいなかった。弟の前でだけはお姫様のように振る舞うことが許され、その頃の序列が現在も続いていた。
このヒステリックで高圧的な女に毎日なんやかんや言われたら、精神的に鈍感か、それとも強靱でないかぎり、家出したくもなるだろうとダンナさんに同情してしまう。
携帯に電話しても電源が切ってあるようだとのことで、それこそ確信犯的な家出ではないかと僕は思った。けれど、それを指摘すると話がややこしくなりそうなので、あえて姉ちゃんの言葉に頷いておいた。
長年の付き合いなので、そこらへんは心得ている。
ダンナさんの実家は隣県で、もう夜も遅かったので、そこまで行っても何も手がかりは掴めそうになかったけれど、助手席で前のめりになって目を血走らせている姉ちゃんを見るとそうも言えなくて、渋々ながら深夜の県道を県境の峠道へと車を走らせた。
最悪の事態に陥ったのは、携帯も圏外になる山の中まで来たあたりでだった。唐突にエンジンがウンともスンともいわなくなって、車がストップしてしまったのだ。
バッテリーは大丈夫だったし、ヒューズは飛んでなかったし、セルも回る。プラグもおかしくない。どう考えてもエンジン系のトラブルらしく、走行10万キロ超のヘタった中古車を愛車にしていたことを恨むしかなかった。
焦れていた姉ちゃんが、いまにも噛みつきそうな勢いで僕にわめきちらしたのはいうまでもない。
「どうにかしてよ!」
「むりだよー、車が通るの待つしかないって」
「そんなノンキなこと言ってて、あの人が自殺でもしたらどうするのよ」
まさかそんなはずはないだろうとは言えず、僕はひたすら謝った。
怒鳴り散らしたいのはこっちのほうで、こんな夜中まで引っ張り回されたうえにバイト代を貯金してやっと買った車が故障してしまって、レッカー代やら修理代やらが頭を飛び交って、さらに姉ちゃんのキンキン声を浴びせかけられている状況は、本当に泣きたいくらいだった。
姉の前で放尿
10月に入ったばかりの時期でも、山のあたりは夜になるとかなり冷えこむ。エンジンがかからないからエアコンも使えないので、じっとしていると身震いが出る。
しまいにオシッコがしたくなって車から出ようとしたら、姉ちゃんが苛立った声で呼び止めた。
「どこ行くのよっ。あたし一人置いて、逃げるんじゃないでしょうね!?」
「まさか、逃げるって、こんな山の中でどこに逃げるんだよ」
「信用できるもんですか、さっきから嫌そうな顔ばっかりして、一人で逃げ出したっておかしくないわ」
苛立ちがピークに達して、被害妄想を加速させている姉ちゃんだ。
「オシッコだよ、逃げないって」
「ホントにホントっ!? ウソいってるんじゃないでしょうねっ」
「ホントだってば…」
「なら、あたしから見えるところでオシッコするのよ」
ヒステリックなキンキン声が真っ暗な峠道に響く。山の中でなかったら、まず近所迷惑で通報されているだろう大声だ。
片側一車線の細い道路で、路肩に車を停めていた僕は、姉ちゃんの指示を仰ぎながらオシッコする場所まで決められることになった。
「そこじゃだめ、もっとこっちにきて」
「え、こんなとこ?…」
「そうね、ここでいいわ」
運転席側に身を乗り出して姉ちゃんが目で指し示したのはドアのすぐ前で、僕の声もひっくり返ってしまった。
「ここでするのおー!?」
「そう、そこでしなさい。こんなひどい目に遭わせたんだもの、それくらいで文句言わないの」
その言い方はどうかと思ったけれど、姉ちゃんの目が殴りかかる寸前の酔っぱらい並に揺れているので、なにも言い返せなかった。
「わかったよ、ここでションベンすればいいだろっ…」
開き直りの心境で、チッと舌打ちして背を向けたら、その態度が気にくわなかったとみえて、
「なによっ!」
と苛つき気味に言ったかと思うと、またキンキン声を上げた。
「だめ、こっちを向いてオシッコするのっ」
「な、なんでだよう!」
「アンタ、どれだけお姉ちゃんが大変な目に遭ってるか、まるで自覚してないじゃない。ノンキな顔して、どれだけ大変な事なのかわかってないわ」
「わかってるよ、ダンナさんが失踪したんだろ、だから運転手になってるんじゃんかー」
「ほら、その面倒くさそうな言い方って何よ。お姉ちゃんがどれだけ悲しい思いしてるのか、ちっともわかってないじゃない。それにこんな場所でこんな目に遭わせて…、少しは反省してるの?」
「悪いと思ってるってば、それとオシッコがどう関係あるんだよー」
「悪いと思ったなら、お姉ちゃんのほう向いてオシッコしなさいっ!」
子供にお説教をする母親みたいな言い方で、姉ちゃんはキッと睨み付ける。謝意の証として、恥ずかしい振る舞いをしろというわけだ。
どうにも納得がいかなかったけれど、ここで何を言っても通じやしないことは、弟の僕がいちばんわかっていた。
けれど姉ちゃんの前でオシッコをするところを見せるにはプライドというものもある。
子供の頃なら平気だったことでも、僕もいまでは27歳の立派な男だ。文句を言われたうえにオシッコするところまで見せるなんて、やはり納得いかないし、恥ずかしい気持ちもある。
「さあオチンチン出しなさい、イヤだっていっても、許してあげないわよ」
子供の頃に聞いたような、お姉さん面を気取った見下した口調で、姉ちゃんは言う。本当に子供を相手にしているような目だった。