おれのこわばりきった砲身に、痛いほど五指を巻き付けながら義母は、おれが油を塗りたくったようなぬらぬらの花唇の上べりで、腫れぼったくなった花芽をさやごと吸引すると上体しならせ…。

（告白者）
佐渡谷淳史（仮名・33歳）

三つ年上の美しい義母

挑発してきたのは義母のほうだった。その挑発に応じてしまったおれも、どーかしているといえばどーかしていた。
ただ、あのとき、抑制がきかなかったわけでも、理性を失ってしまっていたわけでもない。
なんとはなし、せっかく楽しみにしていたことが後述するような事情で頓挫し、しかも今回で二度目だったからなおさら義母に同情が湧いた。
義母といっても、おれよりたった三つ年上のいわば同年代の“母親”であり、おねえさんといったほうがよい。
51歳の父にとっては、ひと回り以上も若い、そして亡母に負けないくらい美しい後妻で、14年ぶりの再婚となる。
「おれが入院中に非常によくしてくれて、けっこうな美人なんだが、そんなことは鼻もかけない。外見より人間的器量が大きいひとなんだよ」
おれが海外出張中に病気で入院した父は、おれが帰国後、もう退院して元気になっていた父を会社に尋ねると、めずらしく弾んだ声で義母について語った。
難病で闘病生活を強いられた亡母は、おれの大学合格を見届けるようにしておれが19のときに他界した。
父はおれが大学を卒業し一人前になるまで独身をつらぬいたのだが、途中で仕事が面白くなったらしく、おれが大学を出て就職して以降も、伯母や叔父や町内会長さんらが持ってくる縁談話を、
「いま仕事が忙しいし、面白くて仕方がなくてね。そのうち、こっちから頼みに行くから、そのときは宜しく」
という具合でみんな断わってきた。
まあ、おれのようなごく平凡な顔と違って父はなかなかの男前だしダンディで、会社でも社長に次ぐ地位にある。
だから、ガールフレンドの一人や二人いてもおかしくないし、いたろうが、しかし人生のパートナーとして意識できる女性は亡母以降、いなかったようだ。
それが50代に入って病気で入院し、心が弱ったというよりも、そろそろ第二の人生を考えはじめていたのかもしれない。
「それはいい話じゃないか、父さん。父さんの眼鏡にかなったひとなら、息子のおれが口をはさむ余地なんてないさ」
「そうか。おまえが反対しないのなら、母さんのお墓に報告してくるか」
「母さんだって喜んでくれるよ」
「おまえも大人になったなあ」
「でも、母さんより美人かい？」
「母さん以上は、父さんにはいないよ。だから、母さんに近い……その次だな」
「はっは、父さん、それはすごい美人だってことだよ。おめでとう、父さん」
「おいおい、まだ口説いてもいないよ」
「えっ、デートもまだかい」
「あ、いや、デートは何回か……」
「ダメダメ、早くちゃんとプロポーズしないと、どこの馬の骨だか分からんやつにカッさらわれちまうぞ」
「そ、そうかい」
「そうさ、今日、口説きなよ、正式に」
「おまえには負けたよ、うっはっは」
そして半年前、役所に婚姻届を正式に出して夫婦になったものの、二人はまだ同居していないばかりか、急に父の仕事が忙しくなり新婚旅行もまだだった。
一度目は旅行直前に社長が事故で倒れてキャンセル、二度目のその日は、二人へのプレゼントのつもりでおれが北関東の温泉に招待し、おれの自家用車に二人を乗せ、おれが運転して目的地に向かったのだが、着いて荷物をホテルへ移そうとしたとき父の携帯電話が鳴り、のっぴきならない事情で父は会社にトンボ返りしなければならなくなったのである。

ひいッ、感じる感じる

おれは二人を温泉旅館に届けると、軽くひと風呂浴びて帰る気でいた。
翌日は金曜日だったが、有給休暇を一日もらってあり、どこかのビジネスホテルにぶらり入って、つまり妻と子供には一泊すると伝えて出てきていた。
「取引き先にちょっとトラブルが生じてね。社長がいま出張でアメリカに行っているから私が代役をつとめなくては……」
父は義母に詫び、次は呼び戻したくても呼び戻せない海外旅行を予約するから今回だけ勘弁してくれといい残し、
「急ぐから新幹線で帰京する」
と、おれの車で最寄りの駅まで送らせたのである。
「淑絵には二度も借りができた、いや、おまえにもな。彼女も病院ではずいぶん頼りにされていて、三泊四日もまとめた休みを取るのはかなり無理がいったと思う。淳史、都合が許せば、一泊だけでも淑絵につき合ってやってくれないか」
「分かったよ、父さん。一泊だけだけど新しい母親の話し相手しておくよ」
「すまん、ありがとう」
父との約束を、裏切ることになった。
単なる話し相手などでは終わらずに、父の代わりに“夫役”までこなしてしまったのである……。

新婚義母を父の代わりに前から後ろから責め続け（その2）へ続く