凄絶な過去
邦子さんは28歳の時、最初のパトロンを得て、クラブのママに納まったとのことですが、それ以前は風俗の店を転々としていたようです。
「イメクラ、SMクラブが中心だったけど、20歳の頃に勤めていたイメクラは倒錯男の宝庫だったわ。ビックリしたのは、客のほとんどが40代以上のオジサンで、それなりに社会的立場がある人ってこと。留美子、幼児プレイって知ってる?」
「幼児プレイ? 何ですか?」
「客が赤ちゃんに成り切って、ママ役の風俗嬢に甘えることよ」
「なんか気持ち悪い」
「あたしも最初はそう思っていたけど、何度もやっているうちに、面白くなっちゃって……。社会的な立場の高い男がおしめを付けて、ママ、ママ、ボクのチンチン、舐めて下さい。お乳吸わせて下さいって。ママのあたしは、赤ん坊のくせに、そんなことを言ってどうするのよ、このマセガキ。チンチンにお仕置きしてやるわ、とか言いながら、おしめからペニスを取り出していじるんだけど、40代のオジサンがそれだけで射精してしまうんだから、可笑しくて可笑しくて……」
「そういう男の人って、変態なんですか?」
「別に変態じゃないわよ。少し倒錯しているだけで、ほとんどの男は正常な神経の持ち主よ。赤ちゃんになるのは、一種の回帰願望ね。社会的立場のある40代以上の男はストレスがたまりやすいから、赤ちゃんに成り切ることで、浮き世の憂さを晴らすってわけ」
「SMクラブを利用する男の人も変態じゃないんですか?」
「真性のサドやマゾは変態かもしれないけど、そういう人は滅多にいないわ。SMクラブを利用するのは、普通のエッチに飽きたから少し変わったエッチをしてみるかって程度の人が多いの。留美子は自分のことをマゾと思っているみたいだけど、留美子のマゾの程度なんて大したことがないわよ。断言してもいいけど、留美子はサドにもなれるわ」
「そんな……サドって、男の人を虐めるんですよ。私には絶対出来ません」
「出来るって。あたしはね、SMクラブに勤めていた時、客によって、サドの女王様と情けないマゾ女を使い分けていたの。大抵の人間はサドマゾの両面を持っているから、そんなことも可能なのよ」
「邦子さんはそうかもしれませんけど、私は絶対マゾだと思います」
「そんなことないって。室井以外の3人のパトロンの中にマゾっ気の強い男がいるんだけど、今度、その男とプレイしてみれば分かるわよ」
邦子さんによると、そのパトロンは55歳でアパレルメーカーの社長。邦子さんとは週1の割合で会っているけど、邦子さんの中にペニスを挿入することはほとんどないとのこと。
「セックスしなくても満足しているんですか?」
「彼は真性に近いマゾ男だから、女王様のあたしにいじめ抜かれるだけで、射精してしまうよ。セックスするよりも射精感は遥かに上だって、プレイするたびに言ってるわ」
「いじめ抜くって、どんな風にやるんですか?」
「結構本格的よ。ムチ、ローソク、手錠拘束。言葉で嬲りながら、アナルにバイブを突っ込んだりもするわ」
「やられるのはいいけど、そんなことをやるなんて、私には無理ですよ」
「最初は誰でもそう思うけど、やってみると男を虐める快感に取り憑かれてしまうものなのよ」
「でも、ペニスを挿入されることなく終わってしまうんですよね?」
「そう。ペニス挿入だけがエッチじゃないわよ。現に今日だって、あたしたち、舐め合っているだけじゃない。留美子はペニス挿入がないとダメ?」
「邦子さんが相手ならペニスがなくてもいいけど、男が相手の時は、やっぱり挿入されないと……」
「ふーん、じゃ、マゾのパトロンは留美子には合わないわね」
「他の2人のパトロンも普通じゃないんですよね?」
「室井を含めて4人とも普段は有能な経営者なんだけど、エッチになると人が変わってしまうのね。4人というより、大抵の人間はそうなのよ。だから、人間って面白いのよ。真面目一徹の男がセックスの時も真面目一徹だったら、こんなつまんないことはないわ」
「うちの人はそんな感じですよ」
「だから、留美子は浮気してるんでしょ。留美子が悪いんじゃなくて、旦那に問題があるのよ。でも、留美子の旦那、留美子以外の女の時は変態してるかもしれないわよ」
「浮気出来るような甲斐性がある男じゃないです」
「分からないわよ。男なんて、裏で何をやってるか知れたもんじゃないんだから。他の2人のパトロンだって、1人は大手自動車会社の重役なんだけど、これがフェチもいいところなの。脚にしか興味ない脚フェチなのよ。もう1人は医者なんだけど、これもフェチ。ベロフェチなの」
「ベロフェチって?」
「女の舌と唾液に異常に執着する男のことよ。キスしても唇は無視。舌を吸い、唾液を飲むことで興奮するってわけ。あたしの唾液を飲んでいる時、ペニスをこすってやると、呆気なく発射しちゃうの」
「それじゃ、邦子さんがペニスを受け入れるのは、室井さんだけじゃないですか?」
「そうよ。だから、室井が一番まともだって言ったのよ」
「3人のパトロンとのエッチがそんなんじゃ、おぞましくないんですか?」
「フェチ男とプレイするのも仕事のうちよ。あたし、男からお金を引っ張る為なら何だってするのよ。留美子みたいに経営の才覚はないけど、あたしは男に貢がせる才能はあるの」
結局、その日は明け方まで愛し合ったんですが、私はレズプレイよりも、邦子さんという人間に酷く惹かれてしまいました。ああいう女の人もいるんだ、ああいう女の生き方もあるんだ。邦子さんに比べたら、私なんか尻の青いお嬢さんに過ぎない。もっともっと邦子さんのことが知りたい……そう思い、邦子さんのことが頭から離れなくなってしまったんです。
邦子さんとは別に、室井さんと1対1でセックスした時、私は邦子さんのことばかり話しました。
「この前、邦子さんに招かれて、邦子さんのマンションに泊まったの」
「邦子と一晩レズったんだな」
「そう。最高だったわ」
「僕よりも良かったんだ?」
「同じくらいかしら。それより、邦子さん、言ってたわよ。パトロンの中で一番まともなのは室井さんだって」
「僕が一番まともって、邦子もゲテモノ食いだよな」
「他のパトロンのこと、知ってるの」
「そりゃ、知ってるよ。邦子が話してくれるし、クラブで同席したことも何度かあるよ」
「3人とも見た目は普通なんでしょ」
「当たり前だよ。フェチだからって、変な顔をしてるわけじゃない。僕だって、露出フェチみたいなもんだけど、まともな顔をしてるだろ。それより、キミはこれからも邦子との関係を続けるつもりかい?」
「ええ、続けるわ。邦子さんという人間を突き詰めるまで付き合うつもり」
「邦子に魅せられてしまったわけだ。でも、あの女は底なし沼みたいな女だから、突き詰めるなんてことは不可能だと思うよ。僕はもう5年も付き合っているが、全然分からない。それはセックスに関してもだよ。どういう性癖の持ち主なのか、全く分からないんだ。邦子はどんな相手にでも合わせることが出来るとらえ所のない女だから、深みにハマると抜け出せなくなるぞ」
「そうなっても構わないわ」
邦子さんが望むなら、5人目のパトロンに私がなってもいい。2度目に邦子さんにそのことを言ったら、
「女のパトロンは要らないわよ。留美子はあたしにとって、レズのパートナーだけど、可愛い妹みたいなものでもあるから、パトロンにしたら、偉そうなこと、言えなくなっちゃうしね」
「そういうことなら、パトロンになるなんて、もう二度と言いません。でも、これからもずっと付き合って欲しいんです。私、邦子さんの全てを知りたいんです」
「あたし、そんな大層な女じゃないわよ。男も女も好きなただのエロ女よ。留美子、今日はこれで愛してあげるわ。凄いでしょ、これ」
邦子さんが取り出したのは、ペニスを象った双頭バイブでした。
「女しか愛せない真性レズはこんなものは使わないみたいだけど、あたしも留美子もバイだから、舌と指だけじゃ飽きてしまうものね。これを使えば、何時間でも愛し合うことが出来るのよ。さあ、留美子、入れるわよ」
邦子さんは私のアソコにバイブを挿入しました。それから自分のアソコにも挿入し、両腿を交差させました。
「こうすると、奥まで届くのよ。ああ、入ってるわ。留美子、気持ちいい?」
「邦子さん、あ、ああ、凄い凄い、これ、チンチンよりも気持ちいい!」
私が快感を訴えると、邦子さんはクネクネとヒップを蠢かせました。
「ああ、ダメダメ、邦子さん、私、イキそう、イッちゃう!」
知り合ってまだ間もないけど、私は邦子さんと行ける所まで行ってみようと決意しています。たとえ、その場所が煉獄であっても……。